重要判例

1 診断書不存在を理由とする不支給取消判決。(平成23年1月12日神戸地裁)

老齢基礎年金の受給説明を受けた際20歳初診日による障害基礎年金の存在をはじめて知り、聴覚障害で認定日請求を行った。事後重症請求は支給を認めたが障害認定日請求は却下された。理由は、障害認定日当時の診断書の提出されないため障害状態を確認できないというもの。原告は聴覚障害だったことを嘘だと言われるに等しく悔いとの思いから提訴された事案です。

障害認定日当時の診断書が提出できずに障害年金の請求を断念された方、事後重症請求に甘んじるしかなかった方々には朗報です。形式的な要件を満たさないという理由のみで、認定するに値する客観的で合理的な状況が存在するにもかかわらず障害年金の支給を制限する姿勢は、不合理であり公平性に欠けるものだと考えます。今回の神戸地裁の判断は、妥当なものだと考えられます。

厚生労働省は、医師の診断書は障害状態の審査では欠かせない。その主張は最後まで変わらなかった。障害認定基準にもある通り、再審査請求の裁決書にも示されて居りますが「初診日又は発病日に関する証明資料は、これが障害基礎年金の受給権発生の基準となる日とされている趣旨からいって、直接これに関与した医師又は医療機関が作成したもの、又はこれに準ずるような客観的で証明力の高いものでなければならないと解される。」と含みのあるような表現をしているが多くの場合、診断書が提出されない場合は門前払いに近い対応だ。

原告の方にはこころから敬意を表したいと思います。願わくは、国は、控訴せず昨年の労災醜状男女差別違憲裁判のように判決を真摯に受け、控訴しない。診断書絶対視の形式的な裁定から合理的かつ妥当な裁定が行われるようの見直しをすべきです。(追記;国はその後控訴せず確定した。)

判決は裁判所のHPでまだ公表されていないことから、新聞各社の記事を転載しました。原告女性が手話を否定的に捉えるろう教育の時代で手話も習得できなかった方。法廷にスクリーンを設置し字幕による尋問が行われたことも多くの新聞紙面で取り上げられた。(平成22年7月7日)

特別障害給付金不支給取消の行政訴訟の判決が平成19年に東京地裁で出されました。制度は違いますが本裁判と共通する点が多い判決ではないかと考えます。拙ブログでも紹介しています。こちらをご覧ください。

障害基礎年金の不支給取り消し 神戸地裁が異例の判決

20歳当時の医師の診断書がないことを理由に、国が過去にさかのぼった障害基礎年金の支給を認めなかったのは不当として、聴覚障害のある神戸市の女性(63)が、不支給処分の取り消しを求めた訴訟の判決が12日、神戸地裁であり、栂村明剛裁判長は原告の請求を認め、同処分の取り消しを命じた。

障害基礎年金をめぐり、診断書なしで過去の受給権を認めるのは異例といい、原告側の代理人は「画期的な判決。障害者にとって大きな一歩」と話している。

障害基礎年金は、一定程度の障害がある人が20歳に達した時点で、年金を受給できる制度。

判決によると、女性は両耳の聴力が低く、6歳で障害者手帳の交付を受けた。制度を知らなかったため、平成19年5月に初めて20歳からの支給分を申請したが、当時の診断書がなかったため、社会保険庁に「障害の程度が不明」として19年以前の申請を却下された。

栂村裁判長は判決理由で「医師の診断書以外でも、合理的な資料がある場合は障害の程度を認定できる」と指摘。中学時代の教師や家族らの陳述書をもとに、20歳当時の障害を認定した。そのうえで、支給対象が拡大された26歳時点から受給権があったとして、不支給処分を取り消した。

厚生労働省年金局事業管理課は「国の主張が認められず、厳しい判決」とコメントした。2011.1.12 産経新聞



 

障害基礎年金:診断書なく不支給は誤り…過去の受給権認定

難聴で身体障害者手帳3級を持つ女性(63)=神戸市西区=が、20歳の時には障害基礎年金を受給できる程度の障害があったのに、当時の診断書がないことを理由に国が07年の申請以前にさかのぼっての支給はしないとした処分は誤りだとして取り消しを求めた訴訟で、神戸地裁は12日、原告の主張を認め、処分を取り消す判決を言い渡した。栂村明剛(つがむらあきよし)裁判長は「診断書がなくても、他に障害の程度を判断する合理的資料を得られる場合は認定できる」との判断を示した。

原告側によると、親族らの陳述書や医師の意見書などを踏まえて、聴覚障害者の年金受給権を過去にさかのぼって認めた司法判断は極めて異例という。

判決によると、女性は3歳のころ両耳の聴力が著しく低下。補聴器なしで生活できず、20歳のころ「一生治らない」と診断された。6歳で身障者手帳の交付を受けたが、聴力レベルに関する診断書は残っていなかった。

07年に国民年金受給手続きをした際に障害基礎年金を初めて知り、20歳で受給権が発生したとする裁定を請求したが、却下された。

国民年金法では、障害基礎年金は20歳未満で初診を受け、20歳に達した時点で障害がある場合に支給され、日本年金機構(旧社会保険庁)は診断書の提出を必要としている。栂村裁判長は、原告の知人らの証言などから認定した。

女性は障害基礎年金制度上の2級に該当し、09年度の年金額は年79万2100円。

「無年金障害者の会」(兵庫県尼崎市)によると、カルテがないため障害基礎年金の受給を受けられないという相談は多いという。【重石岳史】

▽厚生労働省年金局事業管理課の話 国の主張が認められなかったことは厳しいと考えている。

毎日新聞2011年1月13日


障害基礎年金制度の存在を知らなかった神戸市西区の女性(63)が、20歳当時にさかのぼって年金支給することを認めない国を相手取り、不支給処分の取り消しを求めた訴訟の判決が12日、神戸地裁であった。訴訟では支給のために当時の医師の診断書が必要かどうかが争われたが、栂村明剛(つがむら・あきよし)裁判長は「他に合理的資料が得られる場合には(過去の)障害の程度を認定できる」と判断。家族らの証言などをもとに、不支給処分を取り消す判決を言い渡した。

障害基礎年金は20歳以前に一定程度の障害のある人が、20歳に達すると支払われる。弁護団や障害者団体によると、診断書がない人の不支給処分がさかのぼって取り消される判決は珍しいという。

判決によると、女性は難聴を理由に6歳で身体障害者手帳を交付された。60歳を迎えた2007年に障害基礎年金制度の存在を知り、同年5月に20歳当時からの障害基礎年金を請求したが、旧社会保険庁は同年より前の支給は認めなかった。訴訟の中で国側は「障害基礎年金の受給権発生を認めるには診断書が必須」と主張した。

判決は診断書に基づいて支給の可否を判断していることを「合理的」と認めつつも「必ず診断書によらなければならないということはない」と指摘。家族・友人の証言や「原告の難聴は先天性」とした近年出された医師の意見書などをふまえ、法改正によって支給対象が広がり、この女性も対象となった1974年からの受給権を認めるべきだとの判断を示した。

判決後に会見した女性は、「障害のある方は診断書が必要と言われてもあきらめないでほしい」と語った。厚生労働省年金局事業管理課の担当者は「国の主張が認められず、厳しい判決だと考えている」とコメントした。(沢木香織)

朝日新聞 20011年1月13日



聴覚障害がある神戸市西区の主婦(63)が国を相手取り、障害基礎年金の不支給決定を取り消すよう求めた訴訟で、神 戸地裁は12日、決定を取り消す国敗訴の判決を言い渡した。

国は過去の診断書がないのを理由に一部の支給しか認めていなかったが、栂村明剛(つがむらあきよし)裁判長は「合理的な資料があれば、障害を認定できる」とし、医師の意見書などを根拠にした。(中略)

60歳になり、国民年金の内容確認のために社会保険事務所を訪れた2007年、障害基礎年金があることを知った。20歳だった1967年にさかのぼって申請したが、国は「当時の診断書がない」と申請以前の支給を認めなかった。

栂村裁判長は、「先天性の難聴」とする医師の意見書や、「口の動きを見てコミュニケーションを取っていた」との家族らの陳述書から、「6歳頃には現在と同程度の聴力だった。診断書の提出は支給の条件ではない」と指摘。主婦が、受給対象となる障害等級(2級)とされた26歳からの受給権を認めた。

ただ、国民年金法は受給権の時効を定めており、判決が確定しても、申請があった5年前の02年以降分の受給となる見通し。厚生労働省年金局事業管理課の話「国の主張が認められなかったことは厳しい判決だと考えている」

(2011年1月13日  読売新聞)

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