知的障害の認定基準について

知的障害の認定基準には、「知的機能の障害が発達期(おおむね18歳まで)にあらわれ」と記述されている。 発達障害の認定基準にはありません。知的障害の初診日は誕生日とする取り扱いを示す文言だと考えられます。

障害年金請求手続きで最初に立ちはだかるのは、初診日の証明の問題です。これが困難な場合が受給困難事例だといえます。その観点からすると知的障害の請求手続きは難しくないといえます。

問題は障害の程度が障害等級の2級以上に該当するかどうか?だけです。他の身体障害や内臓障害では検査数値を重視します。しかし、知的障害では、IQは重要な判断指標とされません。知能指数(IQ)の結果だけでなく、適応機能低下による援助の必要度を勘案し総合的に判断すると述べています。

IQが低くない、療育手帳の判定もAではないからと障害年金受給に不安を抱かれるご家族もいらっしゃいます。日常生活のさまざまな局面で援助が必要な状態だったり、意志疎通や社会性の面で支障があったりする方の受給可能性は高いと考えます。

「知的障害=誕生日」の例外=障害厚生年金の対象となるケースとは;後天性の知的障害。「生来性」ではない知的障害。(極めて)軽度な知的障害で療育手帳も取得していなかった方が他の精神疾患で初めて受診した日が厚生年金加入中だった場合。

認定基準の詳細はリンク先の知的障害の認定基準をご覧ください。平成28年9月から知的障害も対象とされる新たな等級判定基準である「精神障害に係る等級判定ガイドライン」に基づき審査が行われます。

発達障害の認定基準について

発達障害は、先天性疾患ですが知的障害のような誕生日=初診日のような取り扱いはしません。20歳を過ぎてから受診する方が多いことから、最初に受診した日を初診日と認定します。障害厚生年金も受給可能です。

発達障害は障害年金受給が難しいと考えられる方が多いと感じます。でも、それは違います。

コミュニケーション能力、社会適応性の問題等々による「生き辛さ」から、うつ病など他の精神疾患を併発される方は多い。精神障害は総合認定です。発達障害と併発する精神疾患と別々に障害状態を審査するのではありません。

(認定対象外の精神疾患を除き)精神疾患全体の症状・障害状態が、どの障害等級に当てはまるのか判断するのです。

詳細はリンク先の発達障害の認定基準をご覧ください。また、平成28年9月から発達障害の等級判定については、「精神障害に係る等級判定ガイドライン」に基づき認定診査が行われることになりましたのでぜひご覧ください。

自力で出来るからと諦めてはいけません!!

知的障害や発達障害の障害の程度を評価(等級判定)する場合、他の疾患(精神疾患も含む)の評価とは異なる点が多いと考えます。

障害等級2級に該当する状態とは、日常生活を送るうえでさまざまな生活動作が自力では行えず、多くの場合、他の人の助言や指導が欠かせない状態です。ほとんど自力でできない場合は1級です。

知的障害や発達障害では、「自力で行えない」=「自分でやろうとする意欲すらない」状態ではない方も多い。

自分でやれてもその出来栄えや結果は、通常期待されるようなレベルには達しないことが非常に多く、その後始末に家族が追われることになります。時に本人が事故やトラブルに巻き込まれる危険性すらあります。

このような状態は、自力では出来ないと評価してよいでしょう。

障害年金119が請求代理を受任した事例です。自発的な活動は可能ですが上述のような行動を繰り返す方で1級認定されました。受理されてから1月を待たずに支給決定されました。

自発的に活動できるから、働きに出ているからと障害年金の申請を簡単に諦めないでください。

初診日(他の精神疾患を併発した場合)

初診日は、心身の不調を訴えはじめて受診した日。これが原則的な考え方です。でも、知的障害や発達障害と他の精神疾患を併発した場合の初診日認定は注意が必要です。以下、ご紹介します。

知的障害と診断され、更に次の精神疾患を併発した場合の初診日は?

うつ病、そううつ病を後に発症した場合は、知的障害の初診日、つまり誕生日。

統合失調症を後に発症した場合、原則、それぞれ別々の初診日。(主治医は知的障害が原因で統合失調症を発症したと診断した場合、知的障害の初診日。)

神経症の場合、別傷病とし、それぞれの別の初診日となる。

症状性を含む器質性精神障害やてんかんの場合も、別々の初診日

発達障害の場合、知的障害3級該当だと初診日は誕生日で統一、不該当なら初診日は別々。

発達障害と診断され、更に次の精神疾患を併発した場合の初診日は?

うつ病、そううつ病、神経症を発症した場合、発達障害の初診日(診断名の変更と判断)

統合失調症は、原則、別々の初診日。(主治医は発達障害が原因で統合失調症を発症したと診断した場合、発達障害の初診日。)

症状性を含む器質性精神障害やてんかんは、別々の初診日(別の病気扱い)

・ 上記以外の精神疾患は、発達障害の初診日(診断名の変更と判断)

③ 次の精神疾患と診断された人が後に発達障害を併発した場合の初診日は?

統合失調症の場合、統合失調症の初診日(同じ病気扱い)

知的障害(軽度)の場合、知的障害の初診日(=誕生日)(同じ病気扱い)

* 以上、知的障害や発達障害と他の精神疾患を併発された場合の初診日認定の基本的な考え方です。最終的には総合的な判断を行うとしています。

「総合的」?審査請求などでもよく見る文言ですが、総合的に判断した結果に疑問を抱かざるを得ない事例も多い。私は「総合的」とは「例外的な認定もあり得ますよ」と言っているのだと解釈しています。

知能指数や療育手帳との関係について(解説Ⅱ)

知的障害で、IQは50以上だから、療育手帳はAではなくBだからと障害年金の請求を諦めるのは早すぎます。一般の高校を卒業された方も受給されていらっしゃる例はありますので。

認定基準にも書いてあるように、日常生活能力の低下等で生活(社会生活も)することの困難さが、障害等級に該当する程度なのかが重要なのです。

働いていると認定は通らない?(解説Ⅲ)

・ 認定基準には一切書かれてはいないのですが、他の精神疾患の場合には就労の事実は認定のマイナス評価要素となっていると言ってよい状況です。知的障害もある時期に更新時の支給停止が増加し、行政訴訟が提起されました。そのような事情もあり、専門家会議が開催され知的障害の認定基準が見直され平成23年9月から改正されました。参考リンク:改正案及び診断書改定案

・ 障害者枠でなく一般採用で就労されている方も障害年金の受給は可能であることが認定基準に明記されました。平成28年9月から実施された等級判定ガイドラインの総合評価の際に考慮すべき要素の具体例でも、就労支援A,Bによる就労については1級又は2級の可能性を検討する旨記載されています。認定基準やガイドラインの文言が実際の認定にも反映されることを期待します。

* 診断書の「就労状況」欄について

事実を報告する基本的な考え方からすればこの欄に記入した方がよいと思いますが、説明には「できるだけ記入するようお願いします。」とあり。記載は任意です。収入だけしか書いてなく収入が比較的多い場合、それを理由に就労可能で生活能力も高いと認定上不利に評価されてしまうのではと危惧されます。

職場での就労上の問題点(欠勤・早退・遅刻等)や就労継続についての職場の・援助、配慮措置等について可能な限り具体的に記載していただくようにしては如何でしょうか。病歴・就労状況等申立書にも詳細に記載することも欠かせません。

請求について

* 知的障害の認定日請求について

・ 知的障害の遡及請求は困難な方が多い。障害認定日(20歳到達)前3月間・後3月間に受診されなかった方。受診したがカルテを廃棄されたり、病院が廃業したり等の理由で診断書を提出できない方が非常に多いからです。

・ 知的障害の症状は生涯を通して変化がない。これが医学的な定説です。診断書が提出できなくても20歳到達時の障害状態の認定は可能だとする通達も過去にはありました。過去の再審査請求でも診断書なしで請求を認めたこともありましたが、現在は診断書なしで支給が認められることは、行政段階では不可能と言ってよい状況です。

幣事務所も証言や申立書を提出し、再審査請求しましたが、診断書以外では障害の程度を判断できないとの理由で請求は退けられました。

知的障害は20歳到達時に受診しなかった方が多い。遡及請求の診断書が提出できなければ事後重症請求しか認められないのです。請求する人間にすべて証明責任を負わせ、証明する資料の提出ができないのならダメ、後は裁判しかない。このような状況にはやりきれない思いがします。

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