ガンの障害等級

ガンの障害等級は、認定基準第16節/悪性新生物による障害に記載されています。等級判定の根拠となる具体的な検査数値は示されていません。医学の所見等を参考にして「具体的な日常生活状況等により、総合的に認定する」と述べています。

障害等級ごとに例示される障害状態の概要は次の通りです。

1級は、自力での活動範囲が入院中なら病室内、自宅等ではベッドのある部屋だけ。全面的な援助や介助が必要な状態。

2級は、日常生活の多くに援助が必要で、外出も自力では難しい状態。

3級は、短時間勤務、職種限定など通常勤務に著しい制限があるか制限が必要な状態。

予後不良と告げられた方は、障害等級に該当する状態か今後該当されるはずのどちらかです!

ガンは国民の半分が発病し患者の3分の1が亡くなられる病気。しかし、障害年金受給者は少なく、受給できる期間も短いのが実情です。(余談ですが、私もガン切除、抗がん剤治療経験者です。)

理由は高齢者が多いこと。初診日が65歳以降で、すでに障害年金の申請は不可能な方が多いことです。社会保険、制度設計の問題ですのでこのページでの説明は割愛します。詳細はリンク先65歳以降の障害年金申請をご覧ください。

ガンの障害年金受給者が少ない理由は、末期に近づかないと認定基準に該当しない病気の特性があげられます。

ステージの重さや余命宣告の厳しさは重視されず、ガンや治療で生じる栄養状態・全身衰弱・機能障害。ガンが原因で精神疾患等他の病気を併発される方も多い。ガンが原因で生じた障害状態がどの障害等級に該当するかで受給可否が決まるのです。

ガンは初期段階では外見上病気と感じられない方は多いのですが、進行すると急激に悪化します。支給決定時の障害等級よりも重い状態になったり、請求手続きが手遅れとなったりすることにもなりかねません。ガンの等級変更(額改定請求といいます)は決定から1年はできないのです。

ガンの治療で休職や退職を余儀なくされる方も多い。しかし、「労働に著しい制限がある」として3級に認定される可能性は低いのが実情です。

私が代理申請した肺癌(ステージⅣ、転移あり)の方は、抗がん剤治療をはじめると日常生活能力が急激に低下。白血球も極端に減少し、感染症の併発が危惧されるため抗がん剤治療は中断せざるを得なくなりました。中止すると、重度の肺ガン患者とは信じられないくらい健康そうな状態に回復するのです。

ご自身で申請した結果は3級に該当しないとして不支給とされました。

再請求を依頼され、手続きを開始。治療中断の経緯や治療中の日常生活面での制限や不便さを具体的に主治医に説明し、年金機構には病歴・就労状況等申立書だけでなく裏付け資料等を別途提出し、3級で認定されました。

ガンの障害・認定要領

悪性新生物(ガン)の認定対象は、特定器官の障害、全身衰弱・機能障害、抗がん剤などの治療が原因で起こる全身衰弱・機能障害です。

全身衰弱または機能障害により、日常生活能力低下の状態が「一般状態区分表」のどれに当てはまるかがポイント。 一般状態区分表とは、障害の軽い状態(ア)から(オ)まで5段階評価するもの。障害状態を例示したものです。

一般状態区分表と判定される障害等級の目安をご説明します。オは1級、エまたはウは2級、ウまたはイは3級とされます。目安なので受給可能な評価ではないからと諦めないでください。

障害等級及び認定要領の詳細は、リンク先のご確認をお願いします。

ガン治療の結果、精神や身体、内蔵機能等のさまざまな障害(がん以外の障害として外部障害とします、)を引き起こします。外部障害があるときは、外部障害の認定基準で等級判定が行われます。次項「解説・その他」をご覧ください。

解説・その他

■ガンと障害年金の認定

・ガンは初診日から1年6月経過した日(障害認定日といいます。)後まで請求できません。障害認定日まで待つケースも少なくないのです。

例外はあります。たとえば大腸ガンで人工肛門を設置した場合、手術が初診日から1年6月以内だったら手術後6か月後に申請が認められます。

人工肛門設置すれば、障害等級は3級に該当します。(設置しても状態が悪い場合は2級以上で認定も)3級以上なら、初診日に厚生年金加入であれば、6月経過後すぐに申請し人工肛門設置後してから7月後に受給できるのです。

このような取り扱いを「障害認定日の特例」と言います。この特例に当たらないか確認が必要です。

・支給が認められた日から1年経過すると、上位等級への変更を請求(額改定請求)が可能です。(平成26年4月、改正があり1年を待たずに額改定請求は認められましたが、ガンは精神疾患と同様、除外されました。障害年金のガンによる障害認定の厳しさをあらためて痛感させられた改正でした。)

・ガンと治療が原因で複数障害となった場合、ひとつの障害よりも重い等級で認定すると書かれています。併合認定といいます。

先ほども述べたように、障害の状態を的確に判断できる診断書を(必要に応じて複数)提出します。ガン・治療の副作用による障害、術後後遺症、人工肛門、新膀胱増設、尿路変更術は 「その他の障害」の診断書です。たとえば、うつ病を併発された場合は精神障害診断書、身体動作能力低下の障害は肢体障害の診断書を提出します。

・ガンは、申請をいつするのがよいのか?この見極めが非常に難しいのです。申請後すぐに重い等級に該当する状態となっても1年は同じ等級、年金額も変わりません。進行が遅いからと申請を遅らせてもその後急に悪化することも考えなくてはなりません。ガンの障害年金申請は本当に難しいですね。

申しあげられることは、「申請を決めたら一日でも早く済ませる。遅くても今月中に!を目標に手続きを終わらせましょう。」です。

今月末までに提出しないと、ひと月もらえる年金が減ってしまうからです。

ガンの初診日

・初診日は、障害の原因となった傷病に関連する症状を訴え、最初に受診した日(リンク参照)であり、本来の初診日認定の原則的な考えです。ガンの初診日も原則的な認定が行われます。

しかし、ガンと確定診断された日を初診日として認定することがあります。令和元年11月、脳脊髄液漏出症の障害年金申請の新聞報道は、確定診断日を初診日と認定された申請者の不利益について批判する内容でした。障害認定日が遅くなることで受給できる年金が減ってしまうからです。報道の事案では問題はなかったのですが、初診日に加入した年金制度のが違えば受給額が大幅に変わってしまいます。このような初診日認定は以前からあり、脳脊髄液漏出症に限って行われたのではありません。ガンでもあります。

最後にガンの厚生年金受任事例をご紹介します。

障害年金受給でホントウに難しいのは、初診日証明が困難な事案です。初診日認定は、厚生年金よりも国民年金加入時と認定される傾向にあること(障害基礎年金は支給額が少ない。)。別傷病治療中で発症しても、発症後に症状を訴えても初診日と認定されにくいことを痛感させられた事案です。

診断や治療に納得が行かなければ、セカンドオピニオンや転院してでも専門治療を受けること(退職予定なら必須!)。退職後すぐに国民年金保険料を納付しないと未納月となることにも注意が必要と思います。

厚生年金加入中、病名はAと診断され治療を受けていたものの症状は変化。医師はカルテにも変化を記載した。本人はガンを疑い、検査を希望、検査を受けたが病名は同じ。ガンを疑うこともなくA病の治療を続けた。

自己都合で会社を辞め、転居先の最寄りの総合病院を二月後に受診し「ガン」と診断された。外科手術後A病特有の症状は消失。前医で変化後の症状は残り、主治医に聞いたら「変化後の症状はガンの症状だ」と説明された。

障害年金を請求したが初診日は退職後の国民年金加入と認定され、障害等級2級不該当・不支給。審査請求。2級で認定される状態になるまで申請するのを待ったが、その間仕事には就けない状態のまま1年余が経過。状態は悪化するが生活面では自立、外出も車で用を足せる状態が続く。急激に悪化、2年を待たず、障害年金の再請求も出来ないまま他界された。

確定診断日を初診日としか認定しなかった。 初診時の病名Aとガンに相当因果関係を認められないこと。初診病院ではガンの治療を受けていなかったこと。これが理由でした。

ガンがどんな理由や原因で発症したかは医学的に解明は困難です。相当因果関係が認められるとは、A病を発症したらガンになることが医学的に通常だと判断されるような定説を証明しなければなりません。

ガンだと診断せず(できず)に初診時の病名の治療を続けた医師が、ガン発病を疑うこともなく専門医を紹介しなかった。結果、ガンの治療を受けられなかったが数ケ月後ガンと診断されたのです。

障害認定基準にある原則に照らし、ガンの症状を最初に訴え受診した日をガンの初診日と認定すべきだと考えます。

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