精神の障害認定基準の目次

障害等級(各等級の抽象的な例示)

② 認定要領(症状や障害状態と等級認定の説明、例示など)

A. 統合失調症、統合失病症型障害及び妄想性障害並びに気分(感情)障害
(うつ病などの精神疾患全般、但し神経症圏の病気は原則認定対象外とすること)

B. 症状性を含む器質性精神障害(高次機能 障害、アルコール他の依存症も含む)

C. てんかん

D. 知的障害

E. 発達障害

(参考) うつ病や統合失調症の方に障害年金申請代理をお奨めする理由

精神の障害等級表

精神疾患は、他の疾患のように重症度を判断できる客観的な検査数値(知能指数を除き)がありません。等級判定する際は、症状・経過や日常生活・就労状況により総合的に判断されますが、やはり診断書の記載内容が有力な判断材料となります。

平成28年9月から「精神障害に係る等級判定ガイドライン」に基づき認定審査が行われることになりました。(てんかんを除く。)

等級それぞれの状態の例示は以下の通りです。

  • 1級
    精神疾患の症状が原因で、自分で身の回りのことがほとんどできない状態の方が該当する等級。(「寝たきり状態」かそれに近い状態が1級とされます。精神疾患の申請では、1級に該当するケースは限定的であり、1級受給者が更新時に2級に等級変更されるケースも多い。)
  • 2級
    精神疾患の症状が原因で、他人の援助が必要な方や家庭内での簡単なことはできても、それ以外は援助の必要な方が該当する等級。
  • 3級
    精神疾患が原因で、日常生活では時に援助が必要な程度であり、短時間就労可能な状態でも認定される可能性はありますが、フルタイム就労可能な状態での認定は困難な等級。
    (ただし、勤務先が就労上の配慮措置を行っている場合、障害者枠採用でなくても状況によっては認定すると認定基準にはあります。このような状況を診断書や病歴・就労状況等申立書の中で詳細に述べることが欠かせないでしょう。)
  • 障害手当金
    精神疾患で障害手当金の支給を受けることはほぼ不可能だと考えます。 (例外として、症状性を含む器質性精神障害だけです。)
    理由は、障害手当金の障害状態は3級と同程度か少し軽度(4級)な状態。違いは初診日から5年以内に治っていること(=症状固定)が条件です。
    精神疾患は、うつ病や統合失調症のように症状が変動(=増悪、軽快)し、症状が固定することはないと言うのが審査する側の基本的な認識です。知的障害は生涯を通して症状に変動がない。これが医学的な定説ですが、障害年金の審査では環境要因で症状は変動すると考えています。症状性を含む器質性障害を除き、精神疾患での症状固定は認められないのです。

なお、精神疾患による障害認定基準・障害等級(平成25年6月改定)の詳細は、リンク先をごらんください。

認定要領

統合失調症、うつ病の認定要領の詳細は、リンク先をごらんください。

統合失調症とうつ病(そううつ病、双極性障害)の認定要領は、それぞれの等級の例示があり、疾患固有の症状と先に述べた日常生活上の支障や就労面での制限、社会性等について述べています。認定判断の基本は、普段の生活や労働面での不便さが重視されることに変わりはありません。

精神疾患でも、人格障害は原則対象外とされます。不安障害(恐怖性、発作的=パニック等)や適応障害、身体表現性障害などの神経症性障害も原則認定対象外とされていることに注意が必要です。

認定対象外の病名だった場合でも、請求準備を諦めてはいけません。症状が重く、日常生活を送る上で支障があるようなら認定される可能性もあるからです。

実際に対象外の(神経症圏に属する)病名とされた方が、障害年金請求準備を契機に主治医とコミュニケーションをとる中で治療内容が変わり、病名も変更されました。

私が診断書の依頼や取得・内容の評価等について、ご依頼者様ご本人やご家族に行っていただくことが重要だと考えます。理由は、医師とのコミュニケーションをとる機会のひとつであり、今後の治療でも有益だと考えるからです。

統合失調症、うつ病の当事務所のサポート事例もごらんください。

精神疾患・申請のポイント

初診日 : うつ病や統合失調症などの症状を訴え、精神科以外の診療科を受診した場合でもその病院を受診した日が初診日となるのでしょうか?

「はい。」ただし、条件がつきます。最初に受診した病院の医師が、「精神科を受診するように」と指示をしたり、精神科のある病院への紹介状を初診の医師が作成したりすることが条件です。

精神疾患についての治療面での明らかな指示がなかった場合、精神科以外の病院は初診ではなく、精神科を初めて受診した日を初診日と認定されることが多いことに注意が必要です。しかし、最初に受診した精神科以外の病院で、精神疾患と診断されなくてもその病気の症状改善のために治療や薬の処方が行われた場合は、その病院を最初に受診した日が初診日と認定されることがあります。

なお、診療内科などの医師でも精神の診断書を記載することが可能であれば、その診断書提出で支給を認められることがあります。

② 社会的治癒 : 治療を受けていない期間がおおむね5年以上あり、その期間は通常の生活が送れていた場合には、本来の初診日でなく再発後に最初に受診した日を初診日として認めるというものです。詳細はリンク先をご覧ください。

「治療を受けていない」ことを条件に、悪化しない程度に保存的、維持的な治療(服薬)を主治医の指示で薬を服用していた場合でも認定される可能性があります。(社会保険審査会の事例をご覧ください。)現状維持で悪化しない程度の少量の服薬を継続し、病気でない方と同様に働いていた方が、社会的治癒を認められた事例です。「社会的治癒はなかなか認められない。」と簡単に諦めては行けないのです。場合によっては審査請求や再審査請求も視野に入れて請求することも必用なのです。

神経症圏に含まれる病名等だとうつ病や統合失調症等よりも受給が難しくなります。

・ 精神疾患の診断書の病名欄下部には、ICD-10コードの記載欄があります。『精神病の病態』を示さないから原則、認定対象外とされる神経症圏の病名はF40からF48(神経症性障害、ストレス関連障害及び身体表現性障害)に分類されます。このような疾病コードが記載された場合、障害年金の認定を受けることはうつ病や統合失調症よりも難しくなります。F40 恐怖症性不安障害(広場恐怖症、社会恐怖症等)、F41 他の不安障害(パニック障害、全般性不安障害、混合性不安障害等)、F42 強迫性障害、F43 重度ストレス反応および適応障害(心的外傷後ストレス障害、適応障害等)、F44 解離性(転換性)障害、F45 身体表現性障害、F48 他の神経症性障害、があります。

更に、F5;生理的障害および身体的要因に関連した行動症候群(摂食障害、非器質性睡眠障害など)、F6;成人のパーソナリティ及び行動(パーソナリティ障害など)の障害も、F4神経症圏疾患と同様の認定審査が行われます。

参考リンク:障害年金認定での「精神病の病態」、「精神病水準」の定義とは?

・ 認定対象とされる病名に神経症等(F4、F5、F6)の病名を併記すると認定対象の病気に起因する症状、障害状態が神経症の症状を差し引いて認定されることがありますから注意が必要です。(参考リンク)をご覧ください。

統合失調症のコードはF2 (F20からF29)。うつ病やそううつ病などの気分障害はF3(F30からF39)です。となります。

・ ICD-10コードがF4(神経症圏)、F5、F6と診断書の「①」欄に記載された場合、「統合失調症、統合失調症症型障害及び妄想性障害」または「気分(感情)障害」の病態を示していると主治医が判断した場合、そのことと該当する病態のICD-10コードを必ず「⑬備考」欄に記載することが認定の条件となります。

* なぜ神経症に分類される病名を(原則として)認定対象としないのか?

・ 患者自身が病気レベルだと自覚し、それなりに対処できる状態にあること。つまり自分で治そうと行動に移せること。症状が現れ、その症状を他人に訴えることで心理的な充足感を得られることを、根拠にあげるのです。

神経症は、うつ病や統合失調症と比較すると障害の程度が軽いから、日常生活への支障は少ないと考えられていることも理由のひとつです。最初は神経症と診断された方が、うつ病など認定対象の病名に変更されることがあり、当事務所でも診断名が変更され、2級と認定された方の事例が多々あります。

「精神病の病態を示しているもの」の定義は明確ではありません。神経症圏の病名でも症状が重く、日常生活や社会生活を送る上で多くの困難な状態であれば、支給が認められます。また、最初の申請で不支給とされても、審査請求や再審査請求で認定される可能性もあります。決して諦めないことが大切です。

④ 就労と認定との関係

就労していることだけで、症状が軽快したと判断し受給していた年金が支給停止としたり、不利な等級で認定したりしないとの文言が、認定基準改正で加えられた。

しかし、改正されたにもかかわらず就労していることが不支給や支給停止、等級落ちの理由と思われるような認定が行われていると考えます。(なお、診断書の就労状況に関する記載事項は任意ですから月収など申告する義務はありません。)就労の状況を詳細に病歴・就労状況等申立書で述べることが重要です。また、診断書依頼時に就労状況について充分理解されるように説明することも欠かせません。病院の受付で診断書の用紙を渡すだけの「丸投げ」はしないことです。

⑤ 社会性も重視される。

勤務中や日常生活の支障の程度が等級判定や審査の重要な決め手となりますが、対人関係や社会との関係のあり様も重要なポイントとなります。(私がお手伝いしました経験からもこの社会性は認定上、非常に重要だと考えます。)

やはり、状況を認定医や担当者に理解してもらうには、適切な評価の診断書と病歴・就労状況等申立書で説得力のある説明を記載することが必須条件です。

診断書作成依頼のポイント

障害年金の認定判断は主治医が作成した診断書の障害状態の評価に左右されます。とくに精神疾患の場合、客観的な検査数値(IQを除き)で障害の程度を判断できないこともあって、診断書の内容が審査に与える影響は大きいのです。(お読みいただいた皆さまもすでにご承知のことと思いますが。)

最近はご本人申請の場合でも、主治医に診断書の作成依頼をする際に、病歴申立書や診断書の評価項目を書面にして渡される方も増えているようです。でも、症状や日常生活上の支障・不便さを具体的に、簡潔に述べない、あまり関係のない(経済的な事情等)ことを書き連ねるだけでは意味がないのではと考えます。そのようなことも含め、障害年金専門の社会保険労務士へ相談や手続き代理を依頼されるとよいでしょう。

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