初診日不明だと受給できない理由
初診日は、障害年金の請求手続きを進める上で最初に確認しなければなりません。請求資格があるかどうか。受給できる年金の種類・金額を決定する日なのです。
初診日が認定され後は診断書で支給可否が決まる審査段階に進んだら、どのくらいの割合で年金がもらえるでしょうか?
難しいと言われる精神障害でも、初診日が国民年金だった場合は92.4%。初診日が厚生年金は93.3%。
日本年金機構・障害年金業務統計(令和2年決定分)のP5,6をご確認ください。
(因みに令和2年度の運転免許証合格率は77.7%、警察庁免許統計より)
初診日は、次の要件を満たしているかどうかを判断する上で重要です。
- 保険料納付要件;保険料を規定以上納めなかった方の申請は認めないから。(申請書類すら渡してくれないのです。)理由?
- 加入要件;受けられる障害年金はひとつか?ふたつか(支給額の違い)
障害年金119の初回無料相談で、私が最初に確認するのは初診日です。皆さまも役所や年金事務所の相談窓口でも最初に確認されるのは初診日です。初診日が不明な場合、「確認の上再度お越しください。」や病院をいくつか変わられた方には、受診状況等証明書を渡され「初診日の証明を取り再度ご来所ください。」と言われます。
「初診日、ショシンビと何度も聞くな!昔のことで覚えていない。分からんものはわからん!!」などと年金事務所の窓口で、カウンターを今にも叩かんばかりの剣幕で担当者に話される方の声が、時々聞こえてくることがあります。(初診日を事前に調べないで出向かれる方が多いようです。)
年金保険料をまったく納めていなくても20歳前傷病による障害基礎年金は受給できますが、初診日が少なくとも20歳前にあることを証明できなければ支給されません。(生来性の知的障害は除きます。)
初診日を充分に調べた上で窓口相談に行きましょう。初診日を特定するのが難しい方、以下に該当される方は必ず調べましょう。難しい様でしたら障害年金119へご相談ください。
手続きをはじめると、初診だと思っていた日よりも前に受診していた日が見つかることもあります。最初からやり直さなければならなくなり、貴重な時間や初診日証明(受診状況等証明書)の費用もムダになってしまうことになります。
請求が受理された後で別の初診日が判明した場合、書類は請求人に戻される(返戻;へんれい)こともあります。受給開始が遅れることになります。
初診日とは?
文字通り、はじめて医師または、歯科医師の診察を受けた日です。
順番だけでは決められないのが障害年金の初診日で、「初診日は違う!」と日本年金機構から却下されるケースが後を絶たないのです。
あなたの初診日が、以下の③以後にあてはまる場合は要注意。充分な調査が必要で、障害年金専門の社会保険労務士にも相談されることをオススメします。
①はじめて診療を受けた日。(治療行為または療養に関する指示があった日。)
②同一傷病で病院が変わった場合、最初に医師の診療を受けた日。
③同一傷病で傷病が治癒し再度発症している場合(社会的治癒)は、再発後に最初に医師の診療を受けた日。
社会的治癒は、国が初診日の変更を認める社会保険の法理です。
本来の初診日後、(再発予防レベルの治療を除き)治療を受ける必要はなく、健康な方と同様の生活が一定の期間可能だった(社会的治癒期間)。しかし、再発し受診。このようなケースでは、再発後に最初に受診した日を新たな初診日として認定するのです。
④勤務先の健康診断で異常が発見され、その後医師の診療を受けた場合。原則、健康診断を受けた日は初診日となりません。(例外;初診の医療機関の証明がとれず、医学的見地からただちに治療が必要な状態と認められる検診結果だった場合は、請求者が検診日を初診日としたい旨申し立て、検診日を証明する資料が提出可能であれば認められる。)
⑤誤診の場合でも、その後病名が確定した場合、誤診の病院の初診日。(誤診から確定診断までの期間が長かったり、誤診のまま治療を受け続けていたりしていた場合など実際の認定では予想もしない厳しい判断が下される多い。会社勤めの間は誤診状態、退職後に正しい病名・治療が開始された場合、障害厚生年金ではなく年金額の少ない障害基礎年金の対象としか認めない事例は多い。)
⑥じん肺症(じん肺結核を含む)については、じん肺と診断された日。
⑦障害の原因となった傷病の前に、相当因果関係があると認められる傷病があるときは、最初の傷病の初診日。
⑧先天性疾病の場合、20歳前に診察を受けていなくても20歳前の障害基礎年金を受給できる場合があります。(例;生来性の知的障害は出生日が初診日。ただし、例外あり=障害厚生年金受給も可能性あり。)
⑨先天性疾患でも発症、受診した日が初診日とされます。(例;網膜色素変性症、先天性心疾患、発達障害など)。
⑩最初のAという傷病が原因でBと言う別の病気になってしまった。相当因果関係のあるAとBの傷病は同じ傷病として扱われ、初診日は傷病Aの初診日とされます。(慢性腎不全となった原因が糖尿病だったら、慢性腎不全の初診日は糖尿病の初診日となります。)
*初診日の特定が難しいことをご理解いただけたのではないでしょうか?現実は上の①から⑩に該当するか否かの判断が難しい事例も多いのです。相当因果関係に関しても認定基準に記載された事例はごく一部でしかないのです。
初診日の証明は取れますか?
初診日を特定する証拠で一番効果のあるものは、医師の証明です。初診日証明は、診断書を作成する病院が初診なら不要です。違う時は、初診日証明(受診状況等証明書)をカルテの記載内容に基づき作成してもらい提出しなければなりません。
カルテの法定保存期間は5年です。カルテ廃棄、廃業等で証明書の取得が困難な場合も起こります。本人が「受診状況等証明書が添付できない申立書」を記入、以下のような裏づけ資料を添えて提出しなければなりません。
- 身体障害者手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳
- 身体障害者手帳等の申請時の診断書
- 生命保険・損害保険・労災保険の給付申請時の診断書
- 事業所等の健康診断の記録
- 母子健康手帳
- 健康保険の給付記録(レセプトも含む)
- お薬手帳・糖尿病手帳・領収書・診察券(可能な限り診察日や診療科がわかるもの)
- 小学校・中学校等の在学証明・卒業証書
- 盲学校・ろう学校の在学証明・卒業証書
- 第三者証明
- その他
実はその他に「添付できるものは何もない」の項目もありますが、裏づけ証拠を提出しないと障害年金の受給は非常に難しくなります。「その他」の初診日を間接的に証明できる資料を提出すべきです。
初診日の証明資料が提出できない場合、資料なしを理由に認定しないケースが増加しています。一例をあげると、国民年金の未納が20歳直後にひと月だけ未納があっただけでも「初診日が特定できないから」という理由で却下(門前払い)するのです。
何を提出すべきか?提出して認定されるか?は、個々の状況により異なりますが、真正なものであれば『何でも』裏づけ資料となる可能性があります。第三者の証言、発病から初診日までの詳細な状況を説明する病歴・就労状況等申立書の作成も必要です。簡単に諦めないことが何よりも重要です。
諦めなかったことで認定された例があります。認定基準で2級該当とされる治療を受けている方ですが、初診日が古く、初診証明が取れず添付資料なしで請求、不支給でした。再度家中を調べたら古いアルバムの中に初診日当時の領収書を発見、再請求で受給できた事例がありました。
初診証明の例外は、知的障害で受診状況等証明書の提出は不要です。理由は誕生日を初診日として認定するからです。
初診日認定が緩和されたけど?
平成27年10月1日から省令が改正された。「障害年金の初診日を明らかにすることができる書類を添えることができない場合の取扱いについて」です。
第三者証明による初診日の認定は、従来は20歳前障害基礎年金にだけ認めていたのですが、現在は初診日の年齢に拘わりなく適用されます。(条件あり、後述します。)
初診日が一定の期間内にある場合の取り扱いも明確化。検診日は原則、初診日と認めない取り扱いとなりました。
改正の背景は、障害共済年金では本人の初診日申し立てだけで支給を認めていた事実が新聞で取り上げられ、官民格差の露見したこと。国の初診認定の厳格さが際立ち、批判が高まったことも理由でしょう。
以前は本人申し立てだと裁定請求段階で却下、審査請求や再審査請求段階でようやくまともな審査が行われる状況だった。改正により初診日認定の審査の対象となったのです。請求者にとって歓迎すべき改正です。
改正の詳細はリンク先をご覧いただくとして、ポイントをご説明します。
①第三者証明(書式リンク)
- 第三者証明には客観性のある裏づけ資料が必要。初診日が20歳前にある場合、第三者証明だけで20歳前初診日が確認できればよい
- 医師など医療従事者の証言は単独で証明と認められ、その他の資料の添付は不用
- 第三者証明は、医療従事者を除き原則複数の提出が必要。事情により、1名の場合でも初診日認定される可能性もあること
- 第三者証明の内容は、初診日当時の事情を直接知り得た事実、本人、家族などから聞いた事実であること(聞いた時期が請求日からおおむね5年以上前が条件)
- 聞き取った時期が5年以内でも裏づけ資料があれば、認定の可能性があること
- 第三者は民法上の三親等以内の親族は除外されること
○ 第三者証明は、当然内容が重要です。誰に書いてもらうか?も実は相当に重要です。
②初診日が一定の期間内にあると確認された場合
- 一定期間内のすべての月で、保険料納付要件を満たしていること(20歳前、60~65歳を除く)
- 一定の期間の始期・終期に関する資料の提出が必要
- 上記資料は、医学的資料や客観的な裏づけ資料でなければなりません
- 一定期間内に異なる年金制度に加入した場合、初診時にどの年金制度加入か証明する資料を提出すること
③その他の取り扱い
- 5年以上前のカルテに本人申立ての初診日が記載されている場合、本人申立でもカルテに書かれていれば初診日と認めること。(5年以内でも他の客観的資料があれば認定される可能性があること)
○従来、審査請求以上でなければ認められなかったのですが、年金事務所提出レベルで認定される事例が増えました。
- 診察券や入院記録でも請求傷病での初診日と確認できる場合は認定されること
- 健康診断を受けた日(健診日)は、原則初診日と認めなくなった。(申請者が健診日を初診と主張し健診結果などを提出し、一定の状況が確認されれば初診日と認定される場合もある)
- 年月までしか解らない場合、月末の日付とすること(異なる年金制度加入月は月末日付を認めないこと)
- さまざまな医証や医学的判断等を総合的に勘案し、請求者申立の初診日が合理的に推定できる場合は認定するように厚生労働省が日本年金機構に通知したこと
初診日の証明が取れなくても簡単に諦めない。何でも探してみる、身内以外で証言できる人を探そうという気持ちが重要だと思います。
初診日の特定が困難な方のご相談やご依頼を障害年金119 今成社会保険労務士事務所はお待ちしております。
初診日は変更できるか?
「初診日は変えられないのか?」というご相談をいただくことが多いです。
保険料納付要件を満たせない方の場合は切実な問題です。
また、初診日に加入していたのが厚生年金か国民年金だったかでは大きな違いがあります。
障害等級3級から受給できるのは厚生年金加入だった方だけです。障害年金の一時金である障害手当金も初診日厚生年金加入が条件です。
受給後も初診日に国民年金加入ですと2級でも障害基礎年金だけですが、初診日厚生年金加入なら障害厚生年金と障害基礎年金が支給されます。受給額に大きな差が生じます。
ご自身の都合だけで根拠のない初診日変更はムリです。としか申しあげられません。
障害認定基準を否定するような初診日認定が行われていたと、令和元年11月新聞等で報道された。脳脊髄液漏出症で申請した方の初診日は病名が確定診断された日を初診日と認定。本来の初診日と確定診断日までの期間の年金が受給できなくなり、不利益を被った事例です。
翌月、「事務連絡」で「一連の診療のうち、初めて医師又は歯科医師の診療を受けた日を障害年金初診日として取り扱う。」と通知しました。
受任した事例です。確定診断日しか初診日と認定しないのは不当だと審査請求、再審査請求を行いました。病名が確定していないから(適切な治療を受けていたにもかかわらず)「適切な治療を受けていたと判断できない」という理由で門前払いしたのです。
その事案を逆手に、初診日が特定困難な事案で、確定診断日を初診日として申請、受給できまきました。しかし達成感はあまり感じられず満たされない思いが残りました。
脳脊椎漏出症の初診日認定については、同年12月18日相当因果関係の考え方から本来の初診日認定の取り扱いを行うように指示しましたが、慢性疲労症候群や化学物質過敏症等では依然、確定診断日と認定されることが危惧されます。
これから障害年金の申請をはじめたい方で初診日特定が困難な方は、今一度上記の初診日の定義にあてはまる可能性がないか?(とくに③社会的治癒)をご確認ください。また、医学的な観点からどうか?について主治医に相談されることもお勧めします。
社会的治癒に該当しなくても、国は初めて受診した日を必ず初診日と認定するのではありません。
1日だけの受診でも初診日と認定する事例がある反面、様々な理由を付け認めなかった事例も少なくないのです。
初診日厚生年金加入の主張が否定され、請求者に不利な認定事例が多いと感じるのは私だけでしょうか。
初診日の特定に時間が掛かりすぎた結果申請が遅れ、予定していた月の年金がもらえなくなってしまうことも起こります。初診日認定に不安のある方はお気軽に障害年金119 今成社会保険労務士事務所へご相談をお寄せください。