障害年金とは? 目次

  1. 障害年金とは?

    障害年金は公的年金のひとつ。病気やケガで生活や働くことが制限される方の生活を支える制度であり、支給が認められれば定期的に現金が支払われます。

  2. 対象とされる傷病とは?

    ごく一部を除きほぼすべての傷病が対象。病名だけで受給できるか判断しません。「軽度○○」でも受給できます。

  3. 名称の違い、種類について

    障害年金はふたつ(障害基礎年金、障害厚生年金)。初診日加入の年金で種類が決められ、両方受給できる方とそうでない方に別れ支給額もかなりの差が生じます。

  4. 受給できる障害年金の金額はいくらでしょうか?

    障害基礎年金は同じ障害等級なら全員同じ額、障害厚生年金は同じ等級でも人により違います。その人の保険料納付月数や保険料額で年個別に算出するからです。

  5. 申請手続きについて

    障害年金の手続きは、カンタンではありません。手順を理解し着実に進めないと最初からやり直すことも。入手するもの、自分で記入するものと書類の種類も多い手続きです。

障害年金とは?

障害年金は、ケガや病気で生活や仕事に支障のある方の生活を支える制度です。年金の他に一時金(障害手当金)を支給します。

全受給者数は227万人(令和4年6月末現在;出典:厚生年金保険・国民年金事業月報(速報))。身体障害や精神障害等の障害者手帳取得者総数の4分の1以下、受給資格があるのに受給していない方が多数存在するのではないかといわれます。

原因は制度の周知不足だと指摘する方は多い。しかし、情報通信技術の進化した現在、インターネット検索等により障害年金制度を知る機会は飛躍的に増えたはず。制度の周知不足が主な理由ではないと思います。

障害年金受給者が障害者手帳取得者の4分の1程度しかいない現状は、障害年金の厳しい受給要件を満たせないことが原因ではないでしょうか。

障害年金の受給資格(要件)は以下の3つです。

  1. 初診日証明要件;最初に受診した日がいつだったのか?初診日を特定できる証明書等が提出できること。
  2. 保険料納付要件;初診日の前日時点で年金保険料の納付月数が年金法で定める月数を超えること。
    (初診日が20歳前の年金非加入期間にある場合、保険料納付はゼロでもよい。)
  3. 障害等級該当要件;障害の状態が、障害認定日(原則、初診日 から1年6月経過した日。初診日が20歳前の障害年金は20歳到達日か障害認定日のどちらか遅い方の日。)に受給できる障害等級に該当すること。
    障害認定日時点は不該当や診断書提出不可能な場合、申請時点に該当すればよい。

障害年金は請求しなければもらえません。福祉制度と違い、年金は保険料を規定以上納付したことが条件(原則)。民間の保険の仕組みを採用しているからです。例外は、20歳前に初診日のある方が受給できる障害基礎年金。保険料納付ゼロでも受給できます。

初診日は保険料納付要件を確認する重要な日。年金手続きで最初にやることは、初診日の特定です。

初診日を特定したら年金事務所や役所の窓口で初診日を伝え、保険料納付要件(受給資格)の確認を行い、資格があれば必要書類を入手します。障害年金手続きのスタートラインにたった状態ですね。

初診日は本人の記憶による日付を申告するだけでは審査を受けられません。客観的な証明書等の提出が欠かせません。初診の病院にカルテが保管されているか確認し、受診状況等証明書を作成してもらい提出します。

しかし、カルテは医師法で5年まで保管すればよいとされるので、カルテは廃棄され証明書が入手不可能なケースも多い。自分で別の証拠を探さなければなりません。障害年金手続きで最も難しいのが初診日証明だと言っても過言ではありません。

保険料納付要件は%で厳格に判断され、手続きもできなくなります。実際に私が相談を受けた方。経過から遡及請求で何百万も年金受給可能な方でしたが、未納がひと月多かったため断念するしかありませんでした。

提出書類も多く、取り直しや書き直し等で病院や手続き窓口に何度も足を運ぶことも覚悟しなければなりません。時間はどんどん過ぎて行きます。焦ったりムリをしたりはいけません。しかし、事後重症請求だけだと、もらえる年金が少なくなってしまいます。

手続き受理の「締め」は、その月の最終受付日。支給開始は受け付けた月の翌月から。締め日に間に合わなければ翌月受理となり、ひと月分の年金がもらえなくなってしまうのです。

障害年金は受理されればそれ後は結果待ちとはならないケースもあります。追加書類の提出を求められることがあり、審査は中断、支給開始の遅れにも成りかねません。

不支給や障害等級の決定の取り消しを求め不服申立(=審査請求、再審査請求)も可能です。しかし、決定をくつがえすことは難しいのが実情です。

後出しはダメ!やはり最初の申請段階で問題点を把握し、着実に手続きを進めること。障害年金受給の最善の策だと考えます。

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対象とされる傷病は?

ほとんどの傷病が対象となります。(参考リンク:障害年金の対象傷病は多い!

○ 対象外として障害認定基準に記載されている傷病や症状は、以下の通りです。

  • 鼻腔機能の障害 ; 嗅覚脱失
  • 精神の障害 ; 人格障害(原則)、神経症(原則)
  • 神経系統の障害 ; 疼痛(原則)
  • 呼吸器疾患による障害 ; 加療による胸郭変形
  • 肝疾患による障害 ; 慢性肝疾患(原則)
  • 高血圧症による障害 ; 単なる高血圧だけ

(注)神経症や人格障害は原則認定対象外。しかし、「精神病の病態を示しているものについては」認定対象です。該当する場合、診断書に付属する記入説明にある通り、次の2点を医師に必ず記載してもらいます。 ①精神病の病態を示している旨と② その精神病の病名コード。

請求者(代理人も可)が作成する病歴・就労状況等申立書は、実情を理解してもらうように記入しなければなりません。(参考リンク;精神障害申請の留意点

認定基準には明記されていませんが自律神経失調症や「PTSD」も認定対象外です。「うつ状態」や「抑うつ状態」での相談は多いのですが、症状であり病名ではないから対象外です。(主治医がホントウの病名を知らせないために病名としている場合があります。再確認をお勧めします。)

精神疾患の場合、診断書の病名欄の下にICD-10コードの記入箇所があります。このコードでご自身の病気が認定対象かどうか判断できます。F4(F40~48)です。F5,F6の病気も対象外ですが、その後病名が変わり認定対象となることは多い。

認定対象外の病名で「精神病の病態を示して」いなかったとしても、初診日認定では重要な役割を果たします。請求する病名と相当因果関係が認められれば、認定対象外の傷病の初診日が請求する病気の初診日と判断されるからです。

(注2)「疼痛」も原則として認定対象外。例外は神経系統の障害の認定基準で例示される状態に限定されます。診断書や病歴・就労状況等申立書に「痛みが原因で・・・」等の記述があると、審査ではマイナス評価されることもあり得ます。

○ 病名で障害状態や等級は決められません。難病や余命宣告されたガン患者でも支給しないと判断されることが少なくありません。反面、確立した治療が受けられ、生死の問題にすぐに結びつかない傷病での受給者の方が多いのです。

診断書は8種類。障害状態を的確に評価できるものを選ぶことが重要です。種類の違う複数提出も可能で、1種類より有利な場合も多い。検査数値で重症度が客観的に評価できる障害は、数値が等級判定を左右します。そのような数値がない障害は、就労制限や日常生活制限、必要な援助の状況等も考慮し総合的に評価します。

診断書を作成する医師へ状況を適切に伝えること、審査を担当する認定医等に就労や日常生活状況の不便さを「病歴・就労状況等申立書」で適切に伝えること、これはすべての障害に共通する欠かせない手順です。

無料の行政窓口の説明だけでなく、障害年金専門の社会保険労務士に日常生活での状態など詳しく説明され、アドバイスを受けられることをお勧めします。

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障害年金の種類

障害年金は障害基礎年金と障害厚生年金(旧共済年金を除けば)のふたつに分けられます。初診日に加入していた年金制度によって受けられる障害年金の種類が違います。

① 公的年金制度について

・ 国民年金;厚生年金や共済年金(公務員、私学職員等加入)に加入していない20歳以上60歳未満の方が加入する年金。自営業者・パート・アルバイト・学生(国民年金第1号被保険者)、配偶者の被扶養者(国民年金第3号被保険者)の方々が加入します。

・ 厚生年金; 民間の厚生年金適用事業所に勤務し加入義務のある方、公務員(みなし公務員も含め)・私学教職員等で共済年金加入者が加入する年金。(注)厚生年金加入者は、20歳から60歳まで国民年金(第2号被保険者として)に同時加入します。

(注) 旧共済年金; 公務員や私立学校職員が加入する共済組合員の方、ご本人のみ(扶養配偶者は国民年金)。

②初診日加入年金で年金の種類が決まる

初診日に国民年金の第1号と第3号被保険者や初診日が20歳前の年金非加入者は、障害基礎年金だけが対象。

初診日に厚生年金加入中(20歳前も含む)で障害等級1級か2級だった場合、障害基礎年金が同時に支払われる。3級だと障害厚生年金のみ。その他に障害手当金の対象となる場合もあります。

③ 障害等級と障害年金の種類

障害
等級
初診日に加入していた年金制度
国民年金 厚生年金
一元化後
旧共済年金
1級 障害基礎年金 障害基礎年金
障害厚生年金
障害基礎年金
障害共済年金
2級 障害基礎年金 障害基礎年金
障害厚生年金
障害基礎年金
障害共済年金
3級  ------ 障害厚生年金 障害共済年金
3級未満で治癒  ------- 障害手当金 障害一時金

(注)65歳以後の厚生年金加入中に初診日のある方は、障害厚生年金の支給対象です。しかし、1級または2級の障害状態でも老齢基礎年金の受給権がある場合、障害厚生年金だけ支給されます。

障害年金の金額

月額で障害基礎年金は70,383円、障害厚生年金は94,018円。新たに障害年金の支給が決まった方の令和4年6月末時点(出典;厚生年金保険・国民年金事業月報)の平均支給月額です。障害年金の受給額は、初診日に加入していた年金制度によって大幅な差が生じます。

何らかの事情で長年勤めた会社を辞めた。退職まもない日に初診となってしまった場合、より年金額の少ない障害基礎年金しか受けられないのです。

老齢年金のためだけに厚生年金を納めてきたのではないのです。これは「運」や「めぐり合わせ」では済まされません。「自己責任」で片づけられる問題でもありません。法改正が待たれます。

同じ年金制度加入でも個別に年金額が違います。その理由は次の通りです。

  • 障害等級が重くなると年金額(基本額)も多くなるから。(1級は2級の基本額を1.25倍した額に増額される。)
  • 障害等級1、2級と認定され配偶者や子があるとそれぞれの加算額が上乗せされるから。
  • 障害厚生年金の年金額計算は、加入月数や保険料納付額を基に行うので支給額が異なるから。

(1)障害基礎年金

障害基礎年金の基本額は全員同じです。障害等級1級・2級の方に支給され、子があれば子の加算が付きます。

障害基礎年金の加算額を表示する画像です。

障害基礎年金額

障害等級 年金額(令和5年4月~)
障害基礎年金
1級
1,020,000円
(2級の1.25倍、
月額85,000円)
障害基礎年金
2級
816,000円
(月額68,000円)

注;昭和31年4月1日以前に生まれた方は、1級が1,017,125円、2級は813,700円になります。

②子に対する加算額

対象者 加算額(令和5年4月~)
2人目まで 1人当たり 234,800
(月額19,566円)
3人目以降 1人当たり 78,300円
(月額6,525円)

(注)子は18歳になった後の年度末(3月31日)を過ぎていないこと。1級または2級の障害等級に該当する子は20歳まで加算されます。

なお、障害年金受給後に結婚し子ができた場合、生まれた子は加算対象となります。(平成23年4月1日、障害年金加算改善法施行により)

(2)障害厚生年金

障害厚生年金の支給額は加入月数や報酬額により算出されるので個々に差が生じます。男女差もあり、2級の月額で約2.3万円程度あることが厚生労働省の統計(障害年金受給者実態調査令和元年「集計結果の概要」)で確認できます。

年金計算に算入される加入月数が300月に達しない方は300月とみなして計算した額が支給されます。

2級、1級の方には障害基礎年金もあわせて支給。配偶者があれば「配偶者加給年金」も加算されることがあります。

障害厚生年金は障害等級3級の方にも支給されますが、3級は最低保証額が設定されています。 算出された年金額が最低保証額を下回る場合、最低保証額が年金額になります。

65歳以上で障害基礎年金が支給されず障害厚生年金だけもらっている方(1,2級に該当しない)は、障害厚生年金3級の最低保障額が支給されます。

3級未満で症状が固定された方には一時金として障害手当金が支給されます。

障害厚生年金の加算額を表示する画像です。

① 年金額

障害等級 年金額(令和5年4月~)
障害厚生年金
1級
報酬比例部分の年金額の1.25倍
障害厚生年金
2級
報酬比例部分の年金額
障害厚生年金
3級
報酬比例部分の年金額
( 最低保障額612,000円
月額51,000円)
障害手当金 報酬比例部分の年金額の2倍
(最低保証額1,224,000円)

注;昭和31年4月1日以前に生まれた方は、3級の最低保証額が610,300円、障害手当金は1,220,600円になります。

○ 報酬比例の年金額 = (A + B)

A = 平均標準報酬月額 X 7.125/1000
 X   C(平成15年3月以前の加入月数)

B = 平均標準報酬額 X 5.481/1000
 X  D(平成15年4月以後の加入月数)

ただし、(C+D)が300月未満の場合、報酬比例の年金額に300/(C+D)を乗じた額となります。
例:(C+D)=128月の方は、(300÷128)を乗じます。300月あるものと見なして計算。

* 加入月数は、加入開始月から障害認定日のある月までの合計加入月数です。

配偶者加給年金額

234,800円(月額19,566円)

1級または2級の障害厚生年金を受給している方に、生計を維持(生計が同じの意味)されている65歳未満の配偶者があるときは、配偶者加給年金が加算されます。その加算対象配偶者が障害年金や一定の加入月数のある老齢厚生年金を受給することになったときは、支給が停止されます。

申請も多様で複雑、難易度も差がある。

障害年金の仕組みが複雑で受給できる種類、金額も請求する人によって大きな違いがあること等の基本知識はご理解いただけたと思います。3つの要件確認が済めばいよいよ申請の手続き開始です。(以下「申請」を「請求」としています。)

しかし、請求方法にも違いがあり、受給額にも大きな差が生じますので慎重な対応が必要です。反面、可能性が極めて低い高額受給の請求に固執し提出が遅れ、結果的に確実に受給できた年金を受給し損なってしまう事例もあり、請求方法の決定は難しい判断と言えます。

提出が求められる障害認定日時点の診断書の提出可否、一つの障害か複数障害かどうか、複数障害の場合は初診日が同じかどうか等々により、申請方法が違ってきます。詳細はリンク先の説明をご覧いただくとして、基本的な説明を以下述べます。

① 障害認定日請求;原則の障害認定日時点での審査を受けるための請求で、障害認定日から1年を経過する前に行う場合です。提出する診断書はその時点のもの。なお、20歳前に初診日がある20歳前障害基礎年金の場合、障害認定日は20歳の誕生日の前日となります。

遡及請求;初診日から2年6月経過した後で請求する場合は、更に現時点の診断書も提出することになります。障害認定日時点での支給が認められた場合、時効とならない5年分の年金が遡って受給できます。

事後重症請求;障害認定日当時は障害等級に該当しなかったものの、その後傷病が悪化、障害認定日当時の診断書がその他の理由で提出できない方が行う請求です。診断書は現時点のものです。遡って受給はできず請求した月の翌月が支給開始となります。

初めて1,2級の請求;最初に発症した傷病では障害等級の3級以下だった方が、その後別の傷病を発症され、前発と後発の障害を併せたら障害等級が1級または2級に該当する場合に行う請求です。受給資格は後発障害で判断し、診断書は現状の診断書を障害ごとに提出します。支給開始は事後重症と同じです。

併合認定;①や②の請求で複数障害がある場合に複数の診断書を提出し、複数障害の状態を併せて障害等級を判定するように求める請求です。ひとつの障害だけで請求する場合と比べれば、より受給可能性が高くなり、より重い等級(=受給額増)で認定されることも期待できます。

以上、5つの申請についてご説明しました。概要ご理解いただけましたでしょうか。最も受給難易度の高い請求は、②の遡及請求です。

過去の記憶をたどり、さまざまな資料を探しだすことが困難を極め、カルテの法定保存義務期間5年の壁、病院の廃業等々による診断書の取得の困難さもあり、断念せざるを得ないケースが後を絶ちません。(特定の傷病、特殊な受診状況等でその時点の診断書提出が不能でも受給できたケースの代理も経験していますが、例外的な事案と言えます。)また、請求できたとしても厳しい結果となることが多いと感じます。請求の遅れ、支給額の多さが理由でしょうか。

「申請書類提出の月またぎはダメ。手続きは早いほどよい。」と述べました。早く年金が受給できます。手続きする上で肝に銘じておかなければならないことですが、常にそうとはいえません。これが障害年金請求手続きの難しさです。病状、経過や年金加入歴などが個々に違い、的確な請求時期の判断を誤れば、本来受給できる年金受給総額が減ってしまうことにもなりかねないからです。

当事務所の事例をご紹介します。障害認定日後に複数障害を併発、事後重症請求の複数診断書の現症日を病院の事情で合わせられず、そのまま提出すると受給額がひと月間だけ減ってしまうケースがありました。

ご家族も含め申請時期を検討しガンで請求手続き代理業務を受任した方の例です。決定の通知が来ない頃に急激に悪化され、当初想定したよりも重い等級に該当する状態となられたのです。明らかに障害状態が重くなった場合、申請後1年経たなくても重い等級に変更する請求(額改定請求)が可能です。しかし、ガンはそのような請求はできません。額改定請求後、支給決定を待たずに亡くなられてしまわれたのです。

障害年金の請求は、請求される方の発病から現在までの経過や傷病特性・医師の所見・予後等々を考慮し、最善の請求方法で手続きを進めることが重要です。私の説明が障害年金制度理解の一助となれば幸いに存じます。なおご不明な点等がございましたら、無料相談フォームにてご相談をお寄せください。

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