障害年金はいつまでもらえるのでしょうか?
障害年金は受給者ご本人が死亡される月まで支給されます。
ただし、障害等級の変更、その他の事由で減額や支給を停止されることがあります。でも、該当したからと言ってすぐに減額や停止にはなりません。次の表をご覧ください。
原因 | 受給 年金 |
結果 | 支給停止となる時期 |
---|---|---|---|
更新(有期 認定者) |
障害基礎 | 等級 同じ |
停止なし |
障害厚生 | 等級 アップ |
停止なし。更新翌月年金増額 | |
障害基礎 | 3級 以下 |
更新月の4ケ月後から | |
障害厚生 | 3級 不該当 |
更新月の4ケ月後から | |
障害基礎と 障害厚生 |
3級 以下 |
障害基礎だけ更新月の4ケ月後から(障害厚生継続) | |
障害基礎と 障害厚生 |
3級 不該当 |
両方、更新の4か月後から | |
更新なし (永久認定者) |
すべての年金はご本人が亡くなる月まで支給 | 障害年金の支給は止める届けを出す場合、届け提出の翌月から | |
所得その他 | 所得制限は20歳前障害基礎だけ | 所得は8月から一部or全額、該当月の翌月から全額停止 |
よくある支給停止(一部、全額)と減額されるケースをご紹介しました。以下、支給停止の詳細、その他、更新で起きる年金の支払い保留(差し止め)、失権(受給権消滅)についてご説明します。
令和2年2月から令和3年2月末まで障害年金の更新は、すでに障害状態確認届を提出された方も含め、新型コロナウィルス感染症の影響から中止・1年間の延期が4月24日発表されました。詳細は、障害年金119ブログをご覧ください。
支給停止
支給停止は停止すべき理由がなくなれば解除、支給再開されますが、支給停止された期間の年金は支払われません。
① 更新(再認定)
提出する障害状態確認届(診断書)で再認定が行われ、等級変更となり、支給すべき障害等級に該当しなくなれば支給停止されます。障害厚生年金は3級も不該当、障害基礎年金は3級以下となった場合。ただし、年金を受け取る権利(受給権)はすぐに無くなりません。
更新のある方は「有期認定」者として、1~5年の受給期間経過後に障害状態確認届が送付されます。届け(診断書)を医師から作成してもらい提出、再認定を受けることになります。
更新が不要な方は「永久認定」の方だけですが、ご病気や治療経過にもよりますが対象者は少ないですね。ちなみに年金証書の右下に最初の更新年月が記載されます。永久認定は更新年月の記載がありません。
更新診断書を期限内に提出すれば、おおむね3月ほどで結果が通知されます。判断が難しい場合は更に日数が掛かる。日数が掛かる旨の連絡が行きます。期限内に提出しなかった場合、後でご説明する差し止めとなることがあります。
更新の診断書(障害状態確認届)の作成医が変わった場合は注意が必要です。精神疾患のように障害状態の評価の参考にできる検査数値等がなく、診断書の評価が微妙に変わり等級が変わってしまうことも起こり得るからです。
受給後に一人暮らしをはじめたり、一般雇用で働きだしたりされた場合も障害状態の変化と判断される可能性があります。
しかし、更新で等級が落とされたり、支給停止されたりする方は少ないようです。
私が「少ない」と述べる理由は、審査を行う日本年金機構が毎年9月10日頃に公表する「障害年金業務統計」の数字に示されていると考えるからです。
最も対象者多い「精神障害・知的障害」の更新診断書提出者についてご説明すると、令和4年度、障害基礎年金は減額改定(等級落ち)は0.9%、支給停止は0.7%。障害厚生年金の減額改定(等級落ち)2.0%、支給停止は0.9%。との結果でした。
* 支給停止の解除は、原則、支給停止から1年以上経過しなければ、支給停止を求める支給停止事由不該当届は受理されません。(明らかに障害の状態が悪化したと認められる方は除きます。)支給停止解除が認められると届け提出の翌月から支給が再開されます。
② 初診日が20歳前にある障害基礎年金;
保険料納付ゼロでも支給される福祉的な年金なので、独自の支給停止要件があります。監獄、少年院収容、国内に住所がない場合、恩給法や労災給付等受給者、前年所得が規定額を超えるときは年金の全額または一部が支給停止されます。詳細はリンク先をご覧ください。
③ 同じ傷病で労働基準法の障害補償が受けられるとき;
障害厚生年金は6月年間支給停止されます。2級以上は同時に障害基礎年金が支給されますから、障害基礎年金も支給停止となります。
④ 障害年金以外の年金受給を選択する場合;
一人一年金の原則。同時に老齢年金や遺族年金の受給権も取得される場合、違う種類の年金を同時に受け取ることはできず、どちらか有利な年金を選んで受給しなければなりません。障害年金よりも他の年金を受給する方が有利な場合、障害年金は受給せず他の年金を受給すると記入した「年金受給者選択申出書」を提出します。提出すると、その翌月から障害年金が支給停止されます。
⑤ 障害年金の受給は辞退する届けを提出した場合;
症状が軽快した場合です。届け提出した月の翌月から支給停止されます。(私が申請代理を行いうつ病で2級の支給決定を受けられた方で、受給辞退の届けを提出したと報告を受けた方が1名だけいらっしゃいました。)
差し止め
日本年金機構では、支払い保留と呼んでいます。年金の振り込みがされなくなる。障害年金では、更新診断書を期限内に提出しなかった場合に起こります。
提出しなければ支払い停止の状態が続きます。期限後に更新診断書を提出すれば、年金額が差し止められた月に遡って支給が再開。停止された期間の年金が全額もらえなくなる「支給停止」と大きく異なる点です。
特殊な事情で更新診断書の提出が遅れ、さらに次の更新診断書も届いた方の手続きを行ったことがありました。保留された時点の診断書も提出し、支給停止とはならずに保留された年金が遡って支払われました。
* 令和元年8月から、更新時の診断書は提出月(誕生日のある月)の3月前に送付されるようになりました。
令和元年8月以前は、書類送付から提出日までひと月もないような状態でした。変更により、提出日前1月から3月以内の受診日の状態で診断書を書いても良くなり、主治医と意思疎通が図れるようになりました。受け取った診断書の評価について医師に質問する時間の余裕もでき、今後の治療も含め相互理解を深めるよい機会になると思います。
提出期限まで余裕ができたことで、診断書を作成する医師が変わってしまうケースも増えたと感じます。主治医が変わると困る場合があります。とくに精神疾患のように検査数値で障害状態が判断できない障害ですと、医師の見解・評価も変わってしまうことがあるからです。
提出期限に間に合わないと思われる場合、最寄りの年金事務所へ事情説明と事前連絡を入れます。入れたからと言って期限を延長してはくれませんが、念のためです。精神的にゆとりを持って手続きを進めた方がよいと思います。
失権=受給権が消滅する場合
失権とは、障害年金を受給する権利消滅です。当然年金は支給されなくなります。
失権の原因は次のようなものがあります。
①障害状態が3級にも該当しないとして支給停止された方が、次のいずれにも該当したとき。
- 3級不該当の支給停止期間が3年経過したこと。
- 65歳になっていること。
②障害等級に該当せず支給停止となった人が、3年経ったときに65歳になっていた時。または、65歳になり支給停止から3年を経過した日のどちらか遅い日が来たとき。
③ふたつの障害をあわせて別の障害等級に変更されたとき(併合認定)。
併合認定まで支給された(古い)障害の受給権は消滅します。たとえば、いままで3級だった人が併合認定され、新たに2級に改定された場合は、3級の障害厚生年金は受給権が消滅します。
障害年金が支給停止された方に別の障害で支給が認められた場合はどうなるでしょうか。支給停止された年金と新たに支給される別の障害との併合認定は行われず、新たに支給される障害年金だけ受けることになります。
④障害年金を受給している方が亡くなられたとき。
年金は亡くなられた月まで支給されます。日割りではなく月月額です。(参考;未支給年金)
注)【未支給年金】年金の支払い開始は受給権が生じた翌月の「後払い」です。亡くなられた月まで支給されます。次回年金支払日には振り込めなくなるので、未払いの年金(未支給年金)が発生します。下の表をご覧ください。
支給 対象月 |
12月と1月 | 2月と3月 | 4月と5月 | 6月と7月 | 8月と9月 | 10月と11月 |
支払日(休日なら前日以前) | 2月 15日 |
4月 15日 |
6月 15日 |
8月 15日 |
10月 15日 |
12月 15日 |
たとえば、3月5日に亡くなられた場合3月分まで年金は支給されます。
4月15日の年金は、死亡による口座の凍結で振り込みができなくなります。(銀行の事務処理の兼ね合いから必ず振り込み不能とは言えませんが。)2月と3月までの年金が未払い年金=未支給年金となります。
未支給年金は、生計を同じくする遺族が代わりに受け取ることになります。優先順位があり、①配偶者、②子、③父母、④孫、⑤祖父母、⑥兄弟姉妹、⑦三親等以内の遺族の準です。早い順番の方が受け取れば、後の順番の方は受け取れません。子が何人かいる場合は、代表1名だけが受け取ることになります。
「生計を同じくする遺族」とは、同居や住民票上同じ世帯でなくてもよい。世帯分離や住民票の住所が異なる別居でも、死亡者との間に経済的援助関係(金銭だけでなく、物的・現物なものも含まれます。)と定期的な音信があれば「生計を同じくする遺族」と認められます。